★「かもめ食堂」

かもめ食堂」を見終わると
妙に気持ちが落ち着く。


癒される感じは、もちろん、するのですが
それよりも「落ち着く」「安心する」「安定する」
という言葉のほうが何だかピッタリする気がします・・・・。


この映画は

①登場人物の魅力(癒されるキャラ・励まされるキャラ)
②ゆるいストーリーの魅力(場所はフィンランドだけど、
 とても身近で親しみがもてる)
③街並み・料理・衣服・小物自体の魅力

が、どれもマッチングしていて
ひとつの世界観を見事に完成させている。


だから、こういう映画、こういうストーリーを欲していた人は
むちゃくちゃハマってしまう。


さらに
その世界観を演出するために
他の映画とは、かなり違う手法を取り入れていることが
わかります。


カット割りが、とても少ない
1シーンの1カットが極端に長く
登場人物は、長セリフを強いられる大変な撮影がほとんど
(それも、おにぎりを食べながらであったり、
料理をつくりながらであったり・・・)


カメラの位置やカメラの目線がほとんど動かない
シーンの大半を占める食堂内の撮影では
大きなガラス窓や鏡に、カメラやスタッフの姿が
映らないように
かなり離れた位置からカメラを回している


BGMがとても少ない
各キャラクターに合わせて短いテーマ曲が流れるが
それ以外は、ほとんどBGMもなく
サーモンを焼いている音やトンカツを包丁で切っている音
など自然な音だけで構成させている
※だから、しっかりと聞こえて、耳でもおいしく感じてしまう
※だから、エンディングの陽水の曲が心に沁みわたってくる


とにかく
登場人物、登場場面が数えるほどであって
ほとんど同じ人たちが、ほとんど同じ場所で、
ほとんど同じ毎日を送る
そんな日常的なパターンの映画。


いくつか上げるだけでも、こんなことに気づく。


いまどきの映画は
パンパンパンとカット割りを続けて、スピード感やノリを出し
最初から最後までBackには何らかの音楽や効果音が流れている
登場人物も誰が誰だかわからなくなるくらいに大勢出ていて
さまざまな場所で、とんでもないことが連続して起きる
そんなストーリー展開ばかり・・・・。


つまり、
この映画は、そうした映画の中で、
まったく異質な存在。


都会に住んで、働いて、忙しく生きている人が
たまに
田舎に帰った時のような、
のんびりと休日を過ごしている時のような
(あえて何もしないのんびりとした休日)、
そんな時間の流れや呼吸のリズムを
感じさせられます。


だから、とっても落ち着く
だから、こんなに癒される
だから、もう1回見たくなる


こういう邦画を
もっともっと見たいです


かもめ食堂 [DVD]

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