★レッドソックス松坂大輔、初勝利に感じる1億ドルの価値

すべてのレッドソックス・ファン、
すべてのMLBファンが大きな期待をもって待ちわびていた
松坂大輔メジャーリーグ初登板がついに実現した。
そして、その期待通りの結果に、誰もがホッとして、
今後の活躍にますます期待を膨らませられることを
心底喜んでいるところだと思う(私ももちろんそう)。


日本時間4月6日深夜3時10分プレイボールの
カンサスシティー・ロイヤルズ戦での先発登板。
2時55分からのBS生中継で見た人も多いと思う。


それで思い出すのが、
1995年の野茂英雄のデビュー戦だ。
サンフランシスコ・ジャイアンツを相手に
真っ向から立ち向かった姿は強烈な印象として残っている。
確かあの日も平日の午前中に生中継され、
11時の出社時間(フレックスタイム)を気にしながら、
テレビの前で固唾を飲んで見守ったことをよく覚えている。
野茂の投球はもちろんだが、
100球でマウンドを降りなければならないという
投球数の縛りが、とてもスリリングに感じた。


今回の松坂の初登板は
日本時間の深夜だったので
出社時間を気にする必要はなかったが、
試合終了まで見てしまうと
徹夜で会社に行くことになるので
なくなく途中で諦めて寝たが、
この歴史的な瞬間を
リアルタイムで見ることができたのは
本当に嬉しい。


松坂のピッチング内容や試合の内容は
いろいろなところで書かれているので割愛するが
松坂の姿や投球を見て、とても強く感じたことは
松坂には、
ペドロ・マルチネスと同じような存在感があるということだ。
試合後のインタビューで、
デービッド・オルティスが同じような感想を言っていたようだが
きっと多くのレッドソックス・ファンの目にも
そう見えたことだと思う。


その感じをあえて言葉にすると、
「頼もしい存在感」
「見ていて楽しいピッチング」
「相手を見下ろす威圧感」
というところだろうか。



そういう感じを象徴するシーンをひとつ上げると
2004年のあの歴史的なポストシーズン
ヤンキース相手のALCS第5戦、
前日の試合でオルティスのサヨナラ・ホームランで
一死を報いた後の最重要なこの試合の先発マウンドに立ったのが
ペドロだった。


プレイボールがかかり、
ヤンキースのトップバッターである
デレク・ジーターがバッターボックスに入る。
いつものように、
どんどんとストライクをとっていくペドロは、
アッという間に、
ジーターを2ストライク・ノーボールに追い込んだ。
試合が始まって、まだ数分しか経っていないのに、
三球三振を期待するファンたちが総立ちになる中、
ペドロは、その期待に応えるかのように、
外角高めにズドンとストライクを取りに行って、
期待通りの三球三振にジーターを仕留めた。
まさに、絵にかいたような見事なピッチング、
レッドソックス・ファンの思いを
そのまま具現化してくれた瞬間だった。
直後のジーターの苦笑いした表情と
ペドロの気高さまで感じるような自信の表情の
コントラストがとても印象深かった。


シリーズの勝敗は、
まだまだ圧倒的にレッドソックスに劣性であったが、
レッドソックス・ファンには、このペドロの投球で、
そんな劣勢状況を忘れさせるくらいの、
とても大きな自信が湧き上がった気がした。
きっと選手たちにも同じような気持ちが芽生えたと思う。
そして、
このゲームは行けるぞ、と誰もが思ったに違いない。


たった1球、たったひとつの三振で、
みんなをそんな気持ちにさせられる存在感こそ、
エースの姿であり、この時、あらためて
ペドロを心底カッコいい、頼りになる、これぞエースだ、
と強く感じた(残念ながら、その後、
FAでニューヨーク・メッツへ移籍してしまうが・・・)。
そして、実際に、
この第5戦を延長14回の激闘で制して、
そのまま連勝して、ヤンキースを倒し、リーグチャンピオン
そして、その勢いのまま、
何とセントルイス・カージナルスをSWEEPで倒して、
86年振りのワールドチャンピオンになる。


多くの人は、
オルティスサヨナラホームランやサヨナラヒット、
デーブ・ロバーツのあの盗塁、
カート・シリングの血染めのソックスでの力投、
ジョニー・デーモンの満塁アーチなどを上げると思うが
(マニアックなレッドソックス・ファンは
ティム・ウェイクフィールドのリベンジリリーフが忘れられない)、
私は、この第5戦の、この三球三振こそが、
シリーズの流れを大きく変えたポイントだと思っている。


このペドロに感じたような存在感、
相手を見下すくらいの自信、
見ている者すべてを楽しませてくれて、
期待通りのことをやってのけてくれるピッチング、
そうしたものを、同じように、
たった1試合だけでも十二分に、
松坂大輔には感じることができる。


6回に初ホームランを打たれた時の
松坂の表情なんか
「だから何なの?」
「ホームラン1本打たれたけど、それが何か??」
というくらいの表情だった。
あれくらい自信たっぷりでなければ、
エースではない。
三振をとった表情はもちろん、
ホームラン打たれた姿でさえ、
ファンを楽しませてこそ、真のエース、
そして、
我らがレッドソックスのエースに期待する姿である。


全盛期のペドロのような熱いピッチングを
これから6年も見られるならば、
松坂大輔という投手への1億ドルなんて、
本当に安いと思う。


味方としては、
これほど頼りになるピッチャーはいないと思うし、
からしたら、マジにムカつく奴、
それこそエースの証に他ならない。